今宵一夜の戯言

アンドレアンドレっ」
「どうした、オスカル?眠れないのか」
「今 外伝ベルサイユのばら があっていたんだが見たか?」
「ああ、ばあちゃんの部屋で見たよ。一緒に見たばあちゃん怒っていたぜ。あたしゃあんなに人でなしじゃないってね」
「たしかに、あれではばあやに気の毒だな。ばあやはいつだってアンドレ、お前の事を心配しいる。しかしアンドレ、今回はおまえが主役じゃないか」
「なんだか照れくさいな」
「おまけに、許嫁までいるなんて」
「あれには驚いたなあ。俺の知らない所で話が出来あがっている。しかしなぁ、子供の頃の約束をこの年になるまで生き甲斐としてこられてもなあ」
「散々な言われようだったな、アンドレ
「あの、ブイエ将軍まったく下心なしでマリーズを養女にしたのかな」
「そんな下世話なことは考えないことだ」
「すまない、オスカル。平民故の教養の無さだ」
「・・・私こそすまない、この国の96%が平民だということを忘れていた」




「しかしアンドレ、どのベルばらにも登場しているおまえだが、今回はスポットライトを浴びているなんて嬉しいではないか。
いつも数少ない出番のおまえは出てくる度にみけんにしわを寄せ、私が好きだの、私の影だのと壮大な独り言をしゃべったかと思うと、いきなり毒殺を企てたり、唯一の見せ場が橋の上の銃殺シーンではあまりにも不憫だと思っていたんだ。
しかも、分かっているのか?あの橋は客席から一番遠いところにあるんだぞ」
「あの橋のシーンはあれでいいんだ。なぜなら愛しいオスカルを残して死んでいかなくてはならないアンドレの苦しい胸の内を現わさなくてはならないからだ。それなりの時間が必要だ。  
あまり客席に近いと聞こえるじゃないか・・・アンドレなかなかしぶといねって声が・・」
「そうか、そうだったのか。私はてっきり少ない出番に対する恨みつらみから、少しでも観客に印象付けたいが為の演出かと思っていた。
だってそうだろう、銃で撃たれた人間は普通は即死だ。なのにおまえはしゃべるは、唄うは、おまけに見えない目をアピールするは、ではしかたあるまい」
「・・・・オスカル 君は大変な誤解をしていたようだな」
「今度からそう思って見る事にするよ」
「・・・・ぜひそうしてくれ ・・オスカル」




「だが、今回は遠〜い橋の上ではなく センターで踊ってセンターで撃たれてセンターで死ぬのだ。
しかも、本来は私が自らの地位を投げ打って自由・平等・友愛を語る歴史に残る名シーンをおまえがやるのだ、いい気持だろうな、アンドレ
「あぁたしかにいい気持ちだろう。けど、アンドレは所詮平民、オスカルの影なんだ。スポットライトは似合わない。その証拠に俺とおまえが愛を確かめ合うシーンが まさかの屋外になっていたじゃないか」
「あれには驚いたぞ。いくらおまえが私の影の存在だとしても、せめて室内のロウソクの明かりくらいはくれてもいいだろう」
「かまわんさ。俺はおまえと一緒ならどこでもいいんだ」
「私は嫌だ。誰に見られているかもしれないのに・・。それに枕は羽根じゃなくては眠れない」
「・・・そんなことより、明日はパリへの進駐。もう休んだ方がいい」
「私はパリへは行かない。出動命令には従わないんだ」
「オ・オスカル!なんて事を言うんだ」
「だってそうだろう。パリへ行けばおまえも私も死ぬのだぞ。そんなことはごめんだ」
「おいおい オスカルそんなことをしたら、ベルばらの世界が変わってしまうんだぞ!」




「・・・・忘れたのかアンドレ  なんでもあり がベルばらの世界なんだ  しっかりしてくれ」
「・・・・たしかにそうだった・・・あははっ〜 あははは〜っ



「だろう あははは〜っ






              
       『 完 』