夢見るキャベツ

いつものように仕事が終わって、近くのスーパーで夕食のお買い物をしておりました。
カートを押しながら「何をしたものやら」と頭を悩ませながらいろいろな野菜を眺めていたのですが、まったく買う気のない「キャベツ」になんだか目がいきました。

1個148円はまあこちらでは高くはないけど、その先の半分にカットしたキャベツに私の目はくぎ付けになりました。

カットしてビニールに包まれたそのキャベツにはご丁寧に「値下げしました」と但し書きのシールが貼ってあり、値下げ後の価格が表記されておりましたが・・・


な・ん・と!

「798円」なり



キャベツ半分が798円??
値下げをした値段が798円ならば、元々はいくらなのだろう?
私が無知なだけでキャベツにも「キャベツの王様」みたいな品種があるの?

・・と・ほんの短い間に私の頭の中ではいろんな考えが浮かんでおりました。
そして表示してあるびっくり価格より、そこまで高いそのキャベツの正体が知りたい!という気持ちが湧き起こりました。

たまたま近くにいた店員さんは、微動だにせずただ一点を見つめて動かない私を不審に思い、私の視線の先を辿ったに違いありません。
間をおかずして店員さんもそのキャベツの存在に気が付いたのでしょう。
そして・気が付くと同時に

「こ・これは間違いです!」

と、私の視野から奪い去るが如くキャベツを胸に抱くと、大慌てに去って行きました・・・。
「なんだ・・ただの表示間違いか」

と、なんだか妙にガッカリしました。
私という小さな宇宙の中に「キャベツ半分が798円」という非日常な数字は、まるでまだ発見されていない新しいモノを探し当てた時のようなドキドキ感があって、その未知のモノをさあこれから尽きつめようではないか・・・という寸前に持っていかれたような、そんな残念な気持ち・・・(おいおい)。

〜ってくらいきっと私はそのキャベツに見とれていたのだと思うのです。
あのキャベツは多分1個148円のキャベツを半分にしただけの「ただのキャベツ」に過ぎないキャベツだったんだろうし、そのあと正しい値段に直されてまたあの場所に戻って来たんだろうと思うけど、なんだかその短い時間の間だけでも「特別なキャベツ」に昇格されていたキャベツの気持を思うと・・・


いやいや・仕事帰りの主婦にキャベツの気持に想いを馳せる・・そんな悠長な時間はありません。
ただ「キャベツ半分798円」はそうそうお目にかかれない「いいもん見たわ〜」的な気持にはなったのでした。

そんなどうでもいいことなのに、帰ったら早速家族にその話をして聞かせている辺り、よほど日常が変化のない日々なんだと思わないでもなかったですが(笑)。