ミツコさんその後

今日の『MITSUKO』物語は、千秋楽その後・・・のおまけの話(だからどうでもいい話笑)。



今回ミツコの旅に出る時、いつものように航空チケットをいつものように手配した。
だからいつものように旅立てるんだと思っていた。
けど、出発当日の朝「やっとこの日が迎えられた」と、心も軽やかに出かけた私を待っていたのはまぁ・なんとも小さな飛行機。
ロビーで待っている間に「大阪行きは満席です」とアナウンスが流れていたから「へ〜そんなに多いんだ」なんて思ったけど、この小ささでは満席なのもうなずける。バスをちょっと大きくして羽をつけました・・・けど・飛ぶんですと主張しているその飛行機を前に私に選択肢などない。
おまけに乗るためには1回建物を出て、タラップを登って飛行機に乗るという面倒な工程を踏まなくてはならない。
それでも、万が一の時小さい方が安全だと聞いたことがあるので、それだけを頼りに乗りこんだ。


思ったほどの揺れもなく・・・・というか乗り込んで離陸前には眠りこけていたのでよく覚えていないけど、目が覚めなかったという事は揺れなかったんだと思う。
けど、心地よく寝ていた私を一発で目覚めさせたのは着陸する前の車輪が出た時の衝撃と、音。
こんな衝撃普通の飛行機じゃ絶対あり得ないよ〜と思いつつも、無事に大阪に到着した時点でもうすっかり小さな飛行機のことなど忘れていた。



楽しい時間はアッという間で、とうとう大阪ともお別れの時間が来た時、はた・と思った。
もしや帰りもあの小さな飛行機か?


やっぱり期待を裏切ることなく、小さな飛行機が私を待っていた。
今度もまた乗りこむためには外に出なくてはならない。
しかし、その時外は大雨だった。
傘は持っていたけど、かばんの奥深くにしまい込んでいるし、わざわざ出すのも面倒だな〜と思いながら階段を降りて行くと、建物の外には傘を持って係の人がちゃんと待ち構えていた。
1本づつ手渡ししてくれるが、小さな飛行機までは結構な距離を歩かなくてはならない。


その時の私の目に広がったものは
「真冬の雪道も〜真夏の嵐も〜♪」
にも匹敵するほどの、濁流と化した水が地面を流れている光景。


この中を歩くのか?
ミツコさんなら「なぁ〜にも〜恐れずに〜」歩いていったであろうこの道が、私には躊躇われた。


そうは見えないけど、この靴結構お気に入りで大切に履いてるんだよね・・・
履いてるパンツもそうは見えないけど、この日のために買ったんだよね・・・
なんてわがままは聞き入れてもらえない、大きな態度の小さな飛行機が離陸時間を告げていた。


しかたない・覚悟を決めて傘を受け取り飛行機に向かう。当然の事ながら靴はアッという間に水浸し・・・。それでも洋服はなんとか濡れずに済んだと思いきや、タラップを登る寸前で傘は係の人が奪い去ってしまった・・・。
ええ・分かりますとも、機内まで傘は持っていけません。借りたものは返さなくっちゃいけません。
けど・
なんで登りきったとこで返しちゃいけないの?


数段の階段とはいえこの雨だよ・・・
濡れましたとも・見事に〜。


けど・もう乗りこんでしまえばもういいのです。ちょっとわざとらしくハンカチで洋服を拭く素振りは忘れなかったけど・・(笑)。


通路側の席でくつろいでいたら、窓側の席に綺麗な女性が遅れてやってきた。彼女は客室乗務員から足元の荷物を座席の奥に入れるよう言われると、何を思ったのか・・・・いや・きっとこれだけの空席があるんだから何もくっついて座らなくてもいいだろうと思ったのだろう、前の空席に移動したいと申し出た。
客室乗務員は一瞬ためらいを見せたけど、そこはそれプロだもの、優しく「前の席は非常ドアがある席になりますので、万が一の時お手伝いが出来る人を優先的にお願い致しております」と。


それを聞いた女性はちょっと間を置いて律儀にこう答えた
「・・・私にそんなお手伝いができるでしょうか?・・・」


多分その時、私と客室乗務員は同じ事を思ったはず。
「いや〜万が一であって、まずお手伝いの必要はないかと思われますが」


けど、私には何の発言権もないから黙っているしかないけど、客室乗務員には堂々と思いを述べる権限がある。
「お客様、万が一の場合でございます・が、もしよろしければ後ろの席に変わられてもかまいませんよ」


めでたくその女性客は後方席に移動していき、私も気兼ねなく隣の席をひとり占めできた。


そうやってようやく小さな飛行機は、雨雲の中をそれなりに機体を揺らしながら懐かしの故郷へと私を運んでくれた。
めでたし・めでたし・・・


で・
終わるわけない。


いつも飛行機に乗る時は、空港近くの駐車場に車を止めてそこの送迎車に数分の距離を運んでもらう。今回もそうお願いしていつものように送迎車を待っていた。しかし、待てども待てどもやって来る気配がない。あいにくの雨と風で5月だというのに寒い事この上ない。見かねた(と・思う)係のおじさんが
「どこの車?」
と聞いてくれた。答えた私に
「あ〜それ・もう行っちゃったよ」


なんてこと!
電話しなくっちゃ・と電話番号を書いてあったメモを捜すも暗くて分からない。しかも開いたケータイの充電が赤信号!!踏んだり蹴ったりとはまさにこのことかあ〜。
おそるおそるおじさんにその旨懇願すると快く自分のケータイで連絡をしてくれた。しばらく待ってようやく迎えの車が来たけど、乗り込んだ私を待っていたのは運転手のおじいちゃんの 負のオーラ。
取敢えずひと言いってみた
「私日にち間違えて言ってたんですかね」
「昨日になってました」
「すみません」
としか言いようのない私に追い打ちをかけるように
「9時まで待ってたんだよね、連絡もないし・・・」


自分の帰る日にちを間違って言うなんてそんなことありえない・・と自分を信じきれない自分が哀れではあったけど、ここは謝るしかない。
けどそういう会話で少しは心を開いて?くれたのか最後には
「今日もね・もう帰る寸前だったんだよね・よかったね間にあって・あっはは〜」
と笑ってくれた。
ちょっとだけ仲良しになれた。
私は何度も何度も頭を下げて自分の車でそこをあとにし、懐かしの我が家へと帰り着いたのだった・・・・。



今度こそめでたし・めでたし・・



めでたかったかな〜・思わぬ事態に直面したぞ・・・



こうやって私の小さな飛行機の旅は無事に終え、何事もなかったかのようにいつもと同じ日々が繰り返されている。
当り前の日々に時々スパイスを振りかけるようにして非日常的な事が起きる
「とうこちゃんに会いに行く旅」
はそれなりに面白かったり、ドキッとしたりさせられるけど、とうこちゃんなくしては味わえない時間でもある。


次の旅はいつになるのか・・・まあ出来れば普通の飛行機でお願いしたいわ(笑)。