「MITSUKO』

『MITSUKO』公演前ミツコさん縁の地を訪ねたとうこちゃんが「ミツコさんのとてつもない孤独を感じた」と語っていたように、公演を観た私の最初の感想もミツコの孤独だった。



若くして外国に渡ったミツコは思い描いていたお城での暮らしが何もないことに寂しさは感じても、この時そこに孤独を感じることはなかったはず。
愛するハインリッヒとかわいい子供たちがいて、覚えることもやらなくてはならないことも山ほどあって、きっと寂しささえ感じる暇はなかったのかもしれない。



日本を離れるとき日本人としての誇りとプライドは決して失わないよう心に誓ったミツコは、異国の地でも夫に従い子供を育て伯爵夫人としての教養も品格も身につけるが、決して弱音ははかない気丈さにその思いの強さを見ることができる。



夫ハインリッヒの急死の時でさえ感傷に浸っている時間はなかったのだろう。残された子どもたちを立派に育て上げることがミツコに残された使命のように、ミツコは旅立ちを決意し母親として家長としてさらに強く生きていったであろうことは想像に難くない。しかし、結局そんな厳格な母親は堅苦しいだけの存在だったのだろうか。ひとりの娘を残して誰もミツコの側には寄り付こうとしなかった。
晩年ミツコは「日本女性の誇りを忘れず涙を隠して生きてきたのに、辿り着いた港に待っていたものは 無 だった」と嘆き倒れてしまう。



そんなミツコの生き様がすべて孤独だったとは決して思わない。
成長した子供たちが巣立っていくことは至極当然のことであって、それ自体は決して不幸なことではない。ただ、ミツコの境遇を思ったとき、親に勘当され日本を離れ異国の地で夫を失い、子供たちが離れていく・・・・年老いたミツコがそこで感じる孤独がなんとも胸に苦しく響いてくる。




「好き勝手に生きている」と子供たちを口では責めても、亡命しようとする息子に
「閉ざされた扉など振り向かず進むの」
と力強く歌うミツコにどこまでも母親としての強さと優しさを感じずにはいられない。




ミツコの生涯は幸せだったのか・・・そんなことはこの時代からは答えの出しようがないけど、少女時代から年老いた晩年までを・その時々を・地に足を着けて生きている様子を無理なく自然に演じて見せる安蘭けいに、ミツコの人生を一緒に生きている錯覚さえ感じさせてくれる・悲しみも孤独も一緒に体感させてくれる・そんな舞台だった。



とうこちゃんはまたひとつ階段を登ったんですね。




そして次の感じたことは






にいきたいけど、時間がない・・・・ので続く・・・。