師走になると走って来る思い出

12月は師走。
12月は一年間の締め括りの月。
12月はなんだか忙しい。



そう、12月は私にとって思い入れのある月。
思い入れって言ったら 「安蘭けいさま」 以外にはない・・・・ってことがいい事なのか、はこの際どうでもいい。



07年12月 生まれて初めて大劇場で舞台に立つとうこさまを拝見した。
『エル・アルコン』と『レビュー・オルキス』


1階席19列目だったと思う。
開演後すぐのシーンで立樹遥さんを見た時は、なんてきれいなんだと思ったと同時に、「見たい・見たい・この目ではっきりと確かめた〜い」と願い続けた劇場の空間に自分がいることが信じられない気持ちだった。



で・お話しの流れはそっちのけで、とうこさまだけをオペラで追っかけていた。
「はぁ〜とうこちゃんステキ・カッコいい・愛してるわ」(笑)
頭の中はそれだけでいっぱい。
当然ながら、ストーリーそのものが理解出来てないから、最後ティリアンが死んでしまうもの「あれ〜っ死んじゃいましたが・・・なんで?」てなもん。



この時一緒に来ていた姉は1部終演後、冷静に
「あそこで死ななきゃだめよ」
としっかり分析・かつとうこちゃんの評価をしていた。
「さすがに歌はうまいはね。ひとりだけあんなに歌っているのに、お給料はみんなと同じなのかしら」




ヅカファンじゃないと、こうも目の付けどころ、考えることが違うものなのかと、恋に盲目な私にはその時の姉は「どこの惑星からやってきました?」という思いと、ある意味姉の的確?な疑問を持つその感性に、尊敬の眼差しを送ったもんだ。
けど・
「お姉さま、ここは夢を見るために来るところなのよ」と事前に教えておくべきだったのかは・・・・今となっては・・・・もうどうでもいいよっ(笑)。



ショーの『レビュー・オルキス』はとうこちゃんのおじいちゃんっぷりも可愛らしかったけど、そのあとのショッキングピ〜ンクの衣装のダンスシーンが大好きで、今でも、この曲と白い鳩の衣装の中に隠れていたとうこちゃんが現れるシーンを見ると、その時の感動が甦って来て涙が出てくる(笑)。
この時の気持ちだけはきっと忘れないだろう。


最後に大階段を降りて来たとうこちゃんの顔もず〜っと記憶に残っている。
初めて見たこと・聞いたこと・感じたことは、そのあとのことは呆れるくらい忘れていってもしっかり覚えているもんなんだな〜と我ながら感心している。



そんなこんなの初観劇は感激のうちに幕を閉じたので・・・・・・・




ありました・っとさ。
と・はならないのは、お決まりのこと。


まだ、TVでしか宝塚を見ていなかった頃は、公演が終了して幕が下がると同時に席を立って帰っている人が映し出されている光景を見て、「あんなに慌てて席を立つなんて失礼だわ・まだ幕降りてないのよ」なんて思いで見ていたんだが・・・



はい・世の中にはいろんな事情を持ち合わせて観劇に来ている人がいる事を、我が身を通して思い知りました。
この時の観劇はまさにいろんな事情を持った人のひとり(正確にはふたりだな)でして、今なら絶対間に合うから大丈夫って確信のあるフライト時間も、この時はなんせ初めてのこと故、まだとうこちゃん手を振っていますが〜の状態でふたりして席を立ち、館内を走り、花の道を駆け抜けバス停へ一目散。
いやいや ふたりともこんなに走ったのいつ以来かってくらいの力走!
それよりなにより、回りの方ごめんなさいです。



私ら姉妹は久方振りの再会だったにも拘わらず、終演後の余韻も姉妹の会話も許されず、走る事のみを試練とし、気が付けば私はもう機上のひと・・・。
「ごめんよ〜楽しかったかなぁって聞く余裕もなかったよね。おまけに明日はきっと筋肉痛だよね」



しかし、姉は的確な判断力・冷静な精神力・強靭な理性・と同時にタフな行動力も持ち合わせておられるようで、そのあとの妹の誘いを一度も断ることがないということは、それなりに楽しんでいるのだろう。


なんだか12月になるとこの時の事を思い出す。
オペラ越しではあったけど、汗が光っていたとうこちゃんのお顔もピンクのお衣装も忘れない。
そう、忘れない。
だから、バス停に着いた時の安堵した姉の顔が、とうこちゃんの思い出に上書きされることのないようにだけはしなくては・・・・。



それだけは・・・いや〜っ!!