大江山の鬼は何処に

昨年の夏頃、時々行っていたスーパーがある。
食料品から日用品まで一通り揃ってはいたが、どう見ても繁盛しているふうではなかった。


ある日何気なく見た先に、カウンターが設置されていた。
近づいてみると、よく見かける『○○円以上お買上げでお好きな物プレゼント』のキャンペーンがあっていた。
集客を狙ってのことだろう。


選べる商品プレゼントの景品には、お菓子詰合せだの、日帰り旅行券だの、商品券だのの中に、宝塚博多座公演チケットも含まれていた。
こんな片田舎の、しかもこんなスーパーでよもや「宝塚」の文字を目にしょうとは思いもしなかったので、思わず貼ってあったポスターを見上げてしまった。


大空さんと、野々すみ花さんの着物姿も麗しい『大江山花伝』だった。


このスーパーには、元々のポスターは1枚しかなかったのかもしれない。
それを何枚もコピーしたんだろう。が・・
あまり性能のいいコピー機ではなかったらしい。
一応カラーコピーされてはいたが、それから元のポスターの色を想像するには、あまりにも無理があるという程の出来で、背景に至っては問題外もいいとこだった。
よく見ると店内の至る所に貼ってあったが、どれも悲しくなるほどの哀愁を漂わせていた。


着物の色や背景が色彩不明なのはまだ笑える許容範囲としても、この世のものとは思えないお二人のお顔は・・・。

塗りたてのポスターをすぐに立てたら、下に絵具が垂れてしまいました〜くらいの、ある意味インパクトあり過ぎのお顔になっていて、恐怖さえ感じる始末。


「たしかに鬼のお話ではあるが、、」と自分を納得させたものの、はたして、この公演ポスターを見て、「宝塚はきれい、宝塚はすてき」と思った人がいただろうか?。


買い物に行く度、そのポスターが目に留まり、しばらくは私を悩ませたが、このくらいの苦悩なんぞ、この店の経営状況からすれば、ほんのちっぽけなものだったのだろう。






「応募した方の中から お ひ と リ  さまにプレゼントいたします。」



あれだけインパクトあるポスターにしといてたったひとり?なの



せめて1組ペアくらいにはしょうよ・・・・・。





あれから1年がたった。
あのスーパーはそれなりに元気にしているようだ。
地元の支持を得ているのかもしれないが、私の足はめっきり遠のきあれ以来行ってはいない。


今年の夏も同じような企画があったのか、1度確かめに行かなかったことが、ただただ心残りだ(笑)。