ありがとう

終わってしまいました。


今は・・・・
ピアフにもとうこちゃんにも「もうゆっくりおやすみなさいな」という気持でいっぱい。



舞台上に立っているのは「安蘭けい」なのに安蘭けいの形をしたピアフそのものが居るようなそんな舞台。
安蘭けいっていう舞台人を観た そんな気持。




観終わって帰路に着いた今でもピアフの歌声が耳に残って離れない。
凄い舞台を観たという感動は確かにあるけど、それだけではないなんて言うのかずっと心の中がざわざわしているような、切ないような苦しいような・・・・・
それはきっと、とうこちゃんが演じるピアフなのにとうこちゃんとピアフが同一化していて、私がとうこちゃんにピアフを見るのではなくピアフにとうこちゃんを見てしまったから・・・なのかもしれない。
いや・よく分からないな・・・・それほどとうこちゃんはピアフそのもので、だからピアフの壮絶な人生を生きたとうこちゃんが愛しくてたまらないんだと思う。



ピアフが歌手として成功する前のまだ若いころ、そこには夢や希望は無かったかもしれないけど、笑い声はあったんだと思う。
お金はないけど歌って稼ぐと路上で歌うピアフに重苦しい非壮感は感じられない。
その場しのぎでも今日を生きてりゃいいさと前向きな姿に救われる。
そこから歌手ピアフが誕生し、モンタンとの出会いと別れ。そしてマルセルとの出会い。ここから晩年に向けてのピアフをとうこちゃんが全身全霊で、それこそ魂を込めて見せてくれる。
マルセルを失ったあと、マルセルの幻に話しかけ「ひとりはいや」と泣き崩れるピアフ。悲しみと絶望の中で歌う「愛の賛歌」がこんなに胸に苦しい曲だったなんて・・・・聞いていて涙が零れないことはなかった。
誰でもいいから側に行ってその細い肩を抱きしめてあげて、と思わずにはいられない程小さく見えたピアフ。


倒れても歌う事をやめなかったピアフの姿はあまりにも壮絶で、見ている事が辛くなるそんな生き様で、でもそこには歌手としての貫禄と自信もあって、そんな年齢を重ね人生を重ねたピアフを自然に演じていたとうこちゃん。


そしてすべての最後に歌う「水に流して」
私はそれまでとうこちゃんかピアフか分からない世界を見ていたけど、その最後の最後の一瞬だけは安蘭けいを見た思いがした。
「やり遂げた」
そういう叫びも込められていたようなそんな歌い方だった。




「ありがとう」とうこちゃん。
お疲れ様でしたね。